胆嚢の病気

【胆嚢とは】どのような役割をしている?

【胆嚢とは】どのような役割をしている?

胆嚢(たんのう)とは、肝臓の右下の胆嚢窩(たんのうか)という窪みに付いているもので、ナスのような形をしています。長さ7~10cmで、幅3~4cm、容積は60mlぐらいです。胆嚢は胆管の途中で枝分かれした管の先に存在しています。胆管とは、肝臓から十二指腸へ繋がる細い管のことです。そして胆汁とは、肝臓で作られている薄オレンジ色の体液です。1日に500~800ml分泌されています。
胆嚢では、肝臓で生成された胆汁(肝臓胆汁)を蓄えており、水分を吸収することで8倍までに濃縮しています。

胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープとは、胆嚢の粘膜が隆起してできたものです。
この多くは、コレステロールを主成分とした良性のコレステロールポリープです。良性ポリープか悪性ポリープかの区別ですが、ポリープのサイズや形状、胆嚢壁の状態から見極めることができます。
「コレステロールポリープ」と「腺腫性ポリープ」「過形成ポリープ」「炎症性ポリープ」「胆嚢がん」に分類されます。この中でも一番多く見られるのは「コレステロールポリープ」で胆嚢ポリープ全体の90%を占めています。

症状

ポリープができた箇所によっては、腹痛が生じることもあります。しかし、ポリープが発生しても症状はほとんど現れません。胆嚢ポリープが、胆嚢の機能に大きな悪影響を与えることもありません。

原因

胆嚢ポリープの原因はいまだに解明されていませんが、メタボリックシンドロームが関与しているのではないかと考えられています。

治療

胆嚢ポリープは胃ポリープ・大腸ポリープとは違って、内視鏡で切除することができません。悪性ポリープの確定診断が下された場合は、胆嚢を摘出する手術を受けていただきます。 しかし、「胆嚢ポリープと診断された=必ず手術を受けなければならない」というわけではありません。10mmを超えており、かつ悪性ポリープの可能性が高い場合などが、手術の対象となります。

胆嚢腺筋腫症

胆嚢の壁が通常より厚くなる疾患です。病変の箇所やその広がりから、「限局型」「びまん型」「文節型」の3種類に分類されています。

症状

発症しても無症状のままで経過します。特有の症状もほとんど現れません。そのため、他の臓器や症状を調べる時に行った腹部エコー検査によって、偶然発見されるケースが多いとされています。また、胆嚢内や胆嚢壁に、結石(胆石)がみられることもあります。
胆石や胆嚢炎を発症すると、右上腹部の痛み・違和感、吐き気、腹部の張りなどの症状が現れます。

原因

粘膜上皮が筋肉層にまで入り込むことで、胆嚢壁が厚くなると言われています。胆嚢壁は、内側の浅い部位から深い部位にかけて、粘膜と筋組織によってできています。

治療

胆嚢腺筋腫症のみの場合は、治療や手術を行う必要がありません。経過観察を行って様子を伺いただし、下記に当てはまっている場合は手術を検討します。

  • 良性か悪性かの判断が難しい
  • 胆石もできている
  • 胆嚢炎も発症している
  • 胆嚢がんもできている
  • 膵胆管合流異常がある

手術は二種類あり、開腹手術と腹腔鏡下術が挙げられます。近年では、腹腔鏡下術が行われることが増えています。腹腔鏡下術は、患者様へのお身体への負担が開腹手術よりも少ないため、早く退院できるというメリットがあります。そのため早期の社会復帰も可能です。
また、胆嚢がんの方につきましては、化学療法(抗がん剤治療)が行われる場合もあります。
胆嚢の病変だけでなく全身の状態や症状をチェックしながら、お一人ひとりに合った治療プランをご提案します。

胆石症

胆石症

胆汁の成分が石のように固まり、胆管や胆嚢に蓄積してしまう疾患です。特に肥満気味の方、中高年の方、女性の方に多い傾向があります。炎症も起こしている場合は、薬物療法や内視鏡による治療、超音波を用いた破砕(はさい)治療などが選択されます。

症状

腹痛や悪寒、嘔吐、発熱、食欲不振、黄疸(おうだん)などが出現します。特に右上腹部やみぞおち、右肩へ痛みが広がるという特徴を持っています。
無症状の方もおり、検査で初めて発見されるケースも少なくありません。ただし、「右側のみ肩こりを起こしている」「背中が痛い」などの症状がみられる場合は、胆石が隠れている可能性があります。その場合は、早めに受診することを推奨します。

原因

主に、「胆嚢管を塞いでいる胆石」が原因です。ただし、胆石が詰まっただけで炎症が生じるケースあまりありません。細菌の感染や、膵液が胆嚢へ逆流することで発症すると考えられています。また、細菌や寄生虫、アレルギー、血行不良、収縮不全、長期間のダイエットによる胆汁の排出量減少なども、発症に関与しています。

治療

治療方針は、胆嚢炎の度合いによって決めていきます。まずは食事を抜いて点滴を行い、抗生剤を用いて細菌の感染を解消させていきます。
しかし、胆嚢に穴が開いている、あるいは壊疽(えそ)している場合は、速やかに緊急手術や緊急ドレナージ術を行う必要があります。初期治療の後、炎症がある程度緩和された場合は、胆嚢を手術で摘出していきます。
一般的に、胆嚢の摘出には、腹腔鏡が使用されます。腹腔鏡術は開腹手術と比べて傷口が小さく済むので、術後の回復も早く進みます。胆嚢を摘出することで、再発するリスクはなくなります。
右上腹部に痛みがある方、発熱や吐き気など、風邪に似た症状がみられる方、尿の色が濃い方、黄疸を指摘された方は、当院へご相談ください。

胆管炎

胆管炎とは、胆管(胆汁が通る管)に胆石が詰まるなど、何らかの理由によって、胆管が塞がれて狭くなってしまうことで起こります。 胆汁の流れが止ることで胆管内に胆汁があふれ、炎症が起こり、右上腹部に痛みが生じます。 胆石が自然に流れて胆汁の詰まりが解消されると、痛みは落ち着きます。 ただし胆汁の流れが止まったままの状態が続くと、腸内の細菌などが逆流し、細菌感染や急性胆管炎を発症します。

症状

悪寒と共に、発熱や右上腹部痛や黄疸が起こります。

原因

胆管が塞がる主な原因は、「胆管結石」や「悪性腫瘍(胆管がんや胆嚢がん、膵がん)」などと言われています。特に悪性腫瘍は、胆管炎を引き起こす悪性狭窄の原因にもなります。
ただし、徐々に閉塞させる悪性狭窄よりも、急激に胆管結石が胆管へ詰まってしまうことで、胆管炎を発症するケースが多いと言われています。

治療

原則、絶食で過ごしていただき、抗生剤の点滴と解熱鎮痛剤などの服用を行います。
入院での保存的治療を行いながら、胆道ドレナージを実施し、胆汁の流れを元に戻していきます。「保存的治療のみでは完治は難しい」と判断した際は、胆嚢を針で刺して膿を出す治療が行われます。炎症がひどくて意識障害がある場合や、膵炎を併発している場合は、緊急ドレナージが必須です。胆管炎が緩和された後は、結石の除去や腫瘍の治療を進めていきます。

胆嚢炎

胆嚢炎

胆嚢に発生する炎症で、胆石症の合併症として発症するケースが多いとされています。胆石と胆汁酸による刺激によって炎症が起こり、そこに細菌感染が加わることで、炎症が悪化すると考えられています。
胆嚢炎は炎症の度合いなどによって「急性胆のう炎」、「カタル性胆のう炎」、「化膿性胆のう炎」、「壊疽性(えそせい)胆のう炎」、「気腫性胆のう炎」、「慢性胆のう炎」と分けられています。また、胆石症の合併の有無で「胆石性胆のう炎」と「無石胆のう炎」と分類することもできます。

症状

腹痛や悪寒、嘔吐、発熱、食欲不振、黄疸などが挙げられます。右上腹部やみぞおち、右肩へ痛みが広がるケースもあります。

原因

原因のほとんどが、「胆嚢管を塞いでいる胆石」です。ただし、胆石の詰まりだけで炎症を起こすケースはほぼありません。細菌感染や膵液の逆流によって、発症するのではないかと考えられています。また、血行不良や収縮不全、長期間のダイエットによる胆汁の排出量の減少や、細菌、アレルギー、寄生虫なども関与しているとされています。

治療

重症度に合わせて、治療方針が決定されます。まず絶食で過ごしていただきながら点滴を行い、抗生剤を用いて細菌の感染を解消させていきます。
しかし、胆嚢に穴が開いている、壊疽(壊疽)を起こしている場合は、速やかに緊急手術・緊急ドレナージ術を行わないといけません。初期治療後、炎症の回復が確認できましたら、胆嚢の摘出を行っていきます。手術は、腹腔鏡術で行われることがほとんどです。この方法は開腹手術よりも傷口が小さく済むため、術後の回復や社会復帰も早くなります。
胆嚢が摘出できれば、再発するリスクはほとんどありません。

胆嚢がん・胆管がん

胆嚢にできるがんを「胆嚢がん」、胆管にできるがんを「胆管がん」といいます。
胆管がんは二種類あり、肝臓内の胆管に生じる「肝内胆管がん」と、肝臓外の胆管に生じる「肝外胆管がん」に分類されます。胆管自体が非常に細いつくりをしているので、小さながんでも生じてしまうと、詰まりやすい状態になります。
また、胆嚢がんは、胆石と関係があるとも指摘されています。
加齢に伴って胆石はできやすくなりますが、食生活を見直す(脂質の摂取量を減らす、野菜を多く食べるなど)ことで、胆石のリスクを下げることができます。

症状

みぞおちから右上腹部にかけての鈍い痛みや、食欲不振、体重減少、発熱、全身のだるさなどが現れます。
胆管が塞がれて胆汁の流れが滞ることで、黄疸(白目や手のひら、皮膚が黄色くなる)が現れやすくなります。また、褐色の尿が出たり、白い便画出たりします。
とはいえ、全ての胆管がんの初期に、黄疸が見られるとは限りません。肝臓内の細い胆管や胆嚢にがんが発生した場合は、黄疸はあまり出ません。進行してから症状が現れるようになります

原因

原因ははっきりと解明されていませんが、胆汁の通り道である胆道(胆管・胆嚢・十二指腸乳頭部)に、長期的な炎症や刺激が続くことで発症するのではないかと考えられています。

治療

切除できるものであれば、外科的手術が選択されます。早期がんの場合はほとんどの確率で、胆嚢を切除するだけで治ります。診断と治療を兼ねて、腹腔鏡を使用して胆嚢を切除することもあります。
ただし、初期は自覚症状に乏しく、肝臓や胆管、十二指腸、膵臓、大腸などの大事な臓器も近くにあるため、それらに浸潤をきたした進行がんとして、発見されるケースも多々あります
そのため、周辺臓器の合併切除を行って根治させる方法がとられることも、少なくはありません。

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